音楽

弾き語りの概念を壊すヤバ男、『深居優治』【ライブハウスの劇場家】

 深居優治(ふかいゆうじ)、彼は「ヤバイ」。ライブハウスの持つ側面は、音楽を奏でる場所である。深居優治は、そこを劇場へと変化させてしまう。

 良い意味でも悪い意味でも使われる「ヤバイ」の三文字。肯定も否定も出来るポジティブでネガティブなネガポジワード。

 それが「ヤバイ」。

 色んな含みを持つ言葉であることを踏まえた上で、こう言う。深居優治は、ヤバイのだ。頭の足りない記事タイトルになってしまったけど、この言葉が似合う。彼はヤバイ。

ほんの少しプロフィール

 ヤバさの前に少しだけ彼をプロファイリング。

 深居優治は広島出身のアーティスト。2010年あたりから活動し、2014年頃に自身の音楽を「シアトリカルトロニカ」とジャンル付ける。ライブは全国的に行っており、年間の数は100を超える。公開されている音源を軽く紹介。

君という雨

 現時点(H30.4)でMVが公開されている作品はこれのみで、初MV作品となる。

アルバム『アオの呼吸』 収録 『君という雨』公式Music Video 自身の体重よりも重たく、ソロアーティストでは考えられない数の音響機器を駆使し、広島を拠点としながら全国を飛び回る無類の劇場型アーティスト。 深居優治の初MV。

 明るすぎず、暗すぎず。深海と水面が混ざったような曲。はっきりとした言葉の発声と区切り方と、色を極力排除したビジュアルが素敵。

 ただ、この曲(音源)を聞くだけでは、ちょっとエフェクトに飛び道具を使ったシンガーソングライターでしかない。これだけでは、彼の魅力は語れない。

彼のヤバさ。

 ポジティブ&ネガティブ万能ワード「ヤバイ」。肯定も否定も一緒くたに、彼を「ヤバイ」と描写する。

ライブという名の「演目」

 彼はライブの事を「演目」と表現する。彼のライブは「語り」から始まる。音楽ライブにおける、「演奏→MC→演奏」などのオーソドックスな流れを彼は持ってない。

例)一般的なバンド
「MC→演奏→演奏→演奏→MC→演奏→終了」

一方)深居優治
「深居優治→深居優治→深居優治→深居優治→終了」

 彼のライブは深居優治であり、深居優治。二回言ったのは間違いじゃない。音楽単体ならジャンル分けできるだろうけど、彼のライブはジャンル分け出来ない。

 どこまでが演奏で、どこまで語りか。その線引・区切りをとっぱらった一つの舞台。それが彼のライブであり、「演目」。

 彼の演目は、もはや「深居優治」という一つのジャンル。

 元々アーティストやバンドマンってのは、少々痒いことを言ったりとステージ上では「演じる」ものだけど、深居くんのそれは別ベクトルの「演じる」がある。

 YouTubeにも上がっているが、これは是非、生で見てほしい。大抵のものは生のほうがいいが、特にこの「演目」は生じゃないとどうしても魅力が半減する。空間を完全に支配する独特の畏怖さえある空気を肌で感じてみてほしい。本当に空気が「ヤバイ」んですよ。

 駆け、話し、叫び、歌い、演奏するその姿は一つの舞台。「演目」の名に相応しいステージがある。

 スイッチの入った深居優治はもう誰にも止められない。深居くん、止まないね。

エフェクターの量が尋常じゃない

 彼の演奏楽器はアコースティックギターのみである。アコギでエフェクターを使う人はたくさんいる。しかし、深居優治はその数が並々ならない。

 その数まさかのエフェクトボード3個分。多い。しかも小さいエフェクトボードではなく、大きなボードにエフェクターが詰まっている。それが3つ。多い、そしてでかい。

 エレキギターを弾く人間でも、3つあれば多いに分類されるが、アコギでこの量は型破り。多すぎる。毎回荷物が海外旅行並になっている。深居くん、どこいくの?


約90キロ。彼の体重を優に上回る。

 ギターでピアノの音を出したり、環境音を出したり、轟音をうねらせたり。ルーパーや変な音を鳴らしたり。

 衝撃的であり、劇的、変態的にヤバイ深居くんの演目。それらを支えるのが、ソロとは思えないこの大仰な荷物達。全国行脚で電車移動の彼は、駅のホームにエスカレーターがないとき、よく絶望している。彼は日常的に絶望してる。

 ソロアーティストとして、出来る限界に挑戦している感じがとてつもなく好き。自分独りで出来ることを追求するストイックさは、見習いポイント。

※ある日のライブ、本番前の音出しの際、PA(音響)さんに
深居君が「おっけーです」と言うのだけど、音が鳴りすぎ、かつ大きすぎて、何がオッケーなのかまるでわからなくて笑いが漏れてしまった

ニュージャンル「シアトリカルトロニカ」開拓者

生で表現することの出来るライブにこだわり、一つの舞台を組み上げるように幾つものエフェクターと全身を使って、演劇的に物語を創り上げる独自のジャンル『シアトリカルトロニカ』を携え、彼が今まで見たもの感じたことを基盤とした音像空間の中で彼は彼自身のこと、そして彼を取り巻く世界のことを表現する。

「シアトリカル」は劇場的・演劇的。「トロニカ」はフォークトロニカに由来し、アコースティックとエレクトロニカが複合したジャンルのこと。

 それらを合わせて、「シアトリカルトロニカ」と彼は呼んでいる。

 ライブを見れば、その意味がよくわかり、食傷気味の言葉だが「唯一無二」と言わざるを得ない。彼が成り立たせているジャンル。他に似たことしているが人がもしいれば教えてください。

ツイートが「ヤバイ」

 ここもまた、肯定も否定もごちゃまぜにして「ヤバイ」と言いたい部分。

 この類いのツイートを彼は思いっきり朝にするんですよ。朝ですよ、朝。朝起きて、Twitter眺めたら「あなたは死にました」ですよ。「仕事したくねぇ、二度寝しようかな」ってなりますよ。ヤバイ。初対面なのに、クズだのゴミだの罵詈雑言を浴びせられるみたいなハッチャケぷり。ハジケ祭りかと。ドンパッチかと。

深居優治は、ツイ廃である

 彼は自分でも認めているが、ツイッター廃人。ツイ廃だ。暇さえあればTwitter見てると言っていて、実際TLに頻出する。めちゃくちゃ呟きが多い。ライブの様子だったり、日常のことだったり、哲学だったり、ポエムだったり。ツイッターツイッターしてるなと彼を見てると思う。

 もはやフリー素材。彼の高校の卒アルの写真。満面の笑み。

 好き放題に貼りたくっていたので、これから色んなライブハウスにこの写真増えると思います。見つけたら110番しましょう。

あとこの笑顔、本人に確認したら嘘らしいです。嘘でつくった笑顔を戒めるためにそこらじゅうに貼っているのだとか。それどんな気持ちなんですか深居くん。

 こういうツイート苦手な人も多いと思うけど、彼のライブを見たり話したりすればきっと大丈夫。


 あまりツイッター引用が多くなるのは、好ましくないのでこの辺で。

ただひとつだけTwitterに関して言いたいことは、ツイートが多すぎてライブ情報がわかりにくい事と彼自身の発言が埋もれがちになること。

一応ライブ情報用のインフォメーションアカウントも持ってるのだけど、基本的にメインのアカに首ったけなのであまり機能してない。誰か彼のマネージャに。

雨、止まないね。

「雨、止まないね」

 常套句であり、彼の中で重要な要素「雨」。

 雨が降った日は、有無を言わさずこれが脳内再生され、深居優治を思い出してしまう人はヤバイ。

「雨、止まないね」

 そう、自分です。雨が降れば、彼のライブを思い出してしまう。

漢字が一発で変換できない

 深居優治。これを一発で変換できるデバイスは今のところない。深居くん本人が持っているスマホくらいだろう。もしくは頻繁に「深居」とツイートするツイ廃か、辞書登録してるファンか、全国の深居姓の人くらいしか一発で変換できない。それ故にこういうミスが起こる。

 これは悲しい。でも深居優治くんの「居」は珍しいので、大きく責めるも難しい。下の漢字は合っているので、確認を怠ってしまったのだろう。人の名前は間違いは、細心の注意を払うポイントで、自分も気をつけようと改めて思った。

 人の名前を間違えて良いことはあんまりない。経験してるから言えるけど、人の名前を間違えるのは本当によくない。本当によくない。


むすびに

 言葉や物語が好きな自分は彼のライブを見て圧倒されてしまった。会場一体が海に沈んでしまうような感覚があり、深居くんの所作、発言が沁みこんできた。

本当は、今度6月21日に行われるワンマンライブを見てから書こうと思っていたけれど、我慢出来ませんでした。

 深居くんは、ある時ライブを見てから、ずっと書きたいアーティストでした。これでもはやる気持ちを抑え、しばらく我慢し筆を置いていましたが、ワンマンライブまで下書きとして置いておくのは限界を覚え、禁断症状が出かけたのでこうして吐き出しました。

 気になった方は、是非6月21日東京にて深居くんに会いましょう。もしくは対バンでライブを観てほしい。彼はヤバイです。

東京でのライブ情報です。

 ではまた。

<文・編集 = hitoto(@tonariniwa

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