音楽

シューゲイザーと軽さの融合バンド『羊文学』

スリーピースバンド『羊文学』。ジャンルはいわゆるシューゲイザー(寄り)なわけですが、「シューゲイザーってなんだ?」ってひとでも聴けるバンドです。シューゲイザーだけでなく、メロディの強い楽曲も多々。

 鈍行なブルドーザーみたいな重厚感と、青春時代の尖った軽めのナイフが混ざったみたいなバランスを保つバンド。それでいて、爽やかで明るい。相対する要素がてんこもりなバンド「羊文学」

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羊文学とは

軽めのプロフィール紹介

羊文学(hitsujibungaku)
2012年、5人組コピーバンドとして結成。受験のための活動休止と数回のメンバーチェンジを経て、17年2月に現在のメンバーとなる。
東京都、下北沢を中心に活動。

多くの音楽から影響をうけた重厚なバンドサウンドと、意思のある歌声が特徴的なオルタナティヴロックバンド。
2016年 Shimokitazawa Sound Cruising、FUJI ROCK FESTIVAL ROOKIE A GO-GO出演

:羊文学公式サイトより引用

オルタナティブロックバンドとあるけど、それだけでは表しきれない魅力。

ナイフみたいな鋭さ

青春時代が終われば 私達生きてる意味なんてない、このキラーフレーズから始まる『ドラマ』。 

アルバム『若者たちへ』で、歌から始まる曲は『ドラマ』と『天国』のみ。

 『天国』がかなりポップであるに対し、『ドラマ』の始まり方はあまりにも鋭い。青春時代の気取ってた時代を思い出す人も多いのでは。そんな人ごく少数かもしれませんが、尖ってた時代は誰にだってあるでしょう。

 そういうナイフな時代の鋭さが曲の冒頭から飛んでくるんですよ。通り魔ですよこの曲。刺されて、そのまま服従することを余儀なくされる、そんな楽曲。

 その代わりと言ってはなんですが、『天国』の始まり方は非常に穏やか。調子はどう?クーラーガンガンで。
 アルバムでの順番は『天国』が先なんですけどね。『天国』が先って全然穏やかじゃないですけどね。

 天国から語りかけてくる”誰か”。この語り部が誰なのか、そして誰に向けて話しかけてるのか一切明かされない。羊文学の歌詞は基本的に情報をくれない。

 誰に話してるのか皆目検討もつかないのに、「そっちはどう?」「お体にには気をつけてね」と妙にこちらを心配がちな言葉に、頭をくすぐられる感覚。親元を離れたあとにちょくちょく連絡をくれる親のような、そういう優しさがあるわけです。

 シューゲイザー、オルタナティブと簡単に言い切れない、あらゆる要素がてんこ盛りなバンドなんです彼女ら。

楽曲とバンドの特徴

儚くも強い声

 Gt.Voの「塩塚モエカ」の歌声がアンニュイで、透明感抜群。とにかく声が綺麗で良い。出来上がった声をしてる。

 しっかりと作っているなと思える声をしてる。なのに不思議なことにすごく自然体。加工石でありながら天然の石のような。作り込まれてる感があるのに、自然体なんですよ。この歌声がほんとに心地よい。

塩塚モエカ(Gt,Vo):曲を一日でガッと書いたりするので、シンプルというか、いい意味でも悪い意味でも作り込まれてないからかもしれないです。ギターを弾きながら、メロディも歌詞も大体同時に出てくるんです。

 自然体であると感じたのには、このあたりも起因していそう。

重厚なサウンドながら、重すぎない音

 シューゲイザーと聞くと「重いギターの音」「空間系特有の浮遊感」「暗い」みたいなイメージを持つ人は多い。羊文学はそれを踏襲しながら、重すぎない。空中浮遊感のほうがどちらかと強い音楽。さらに言うと、羊文学の音楽は、明るさが強い。

 暗闇を走ってるのに、前がよく見えるんですよ。対向車が来れば、「ライト下げろよ」と言われる明るさ。真っ暗闇で、明るいものをみたときの恐怖って知ってますか? 他のものが見えなくなるんですよ。本当に危ないんですよあれ。そんなのめり込ませる力が羊文学の音楽にある。

 シューゲイザーながら、軽め。重さもあるのに、軽い。というより、羊文学はシューゲイザー寄りのニュージャンルで、シューゲイザーと一括りにするのは不可能。ネオシューゲイザーと言いましょうか、シューゲイザーライトと言いましょうか、もはやシューゲイザーじゃないです。なにかに似てるようで、かなり個性があるバンドなわけです。オルタナティブで素晴らしい。

バンド名に潰されない歌詞の良さ

 羊”文学”と名を冠すだけあって、歌詞が良い。ほとんどの歌詞に、明確な主語や対象があるわけではないのに、情景を浮かばせる。音楽と歌詞の相性がやたら合ってる。過ぎてたきた時代を書けた彼らの血をワクワクするような未来で繋ぐなんて表現が、天気予報という曲から出てくるのは驚いた。

 音楽的にも歌詞的にも、干渉しあうものじゃないのに、上手いこと共存してる。合わせてないのに、勝手に合ってるような感覚。

ベースのゆかりさんは、Gt,Vo塩塚よりギターが上手い?

塩塚:私より全然ギター上手なんです。めちゃくちゃ上手。

インタビューより

 ギター畑出身の元ベースのゆかりさん。

元々は5人だった

2012年に結成され、幾度かのメンバーチェンジを経て、現在のスリーピース体制に。

現在リリースされてる音源は3人になってからのもの

 現在(2018年9月時点)で、2枚のEPと1枚のアルバムが出ていて、それらは3人体制になってからのもの。

一曲目なのに『エンディング』から始まるアルバム、『若者たちへ』

たった4曲で旅をした気分になれる『オレンジハウスチョコレートハウスまでの道のり』

ナイフとソフトクリームの中間のような鋭くてフワフワな『トンネルを抜けたら』

 どれも彼女らの魅力たっぷり。自分が初めてきいたのは『オレンジハウスチョコレートハウスまでの道のり』でした。これと『若者たちへ』は入り口に最適。



むすびに

 邦楽なら『Galileo Galilei』(の後期)や、『People In The Box』『きのこ帝国』などが好きならきっと気に入ると思います。元々ポストロック寄りが好きな方はもちろん。

 ただ、冒頭にも言ったとおり、シューゲイザー寄りのジャンルながら、とても聴きやすく綺麗な音楽をしているので、色々なに推したい。当たり前だけどシューゲイザーの金字塔『Slowdive』や『My Bloody Valentine』が好きな方も。(どちらかと言うと、Slowdive寄りですかね)

 夜中の散歩にピッタリかと思えば、高速でのドライブでも結構合う。昼間のカフェにも合う。

 聴くシーンは選びそうで、あまり選ばない音楽なのが、羊文学。冷たい楽曲が多いのに、様々なシーンにマッチ。。ほんとに不思議。EP:『チョコレートオレンジハウスまでの道のり』とアルバム『若者たちへ』のどこにでもいれるカメレオン力はぜひ一度。ヘビロテしております。

 ではまた。

<文・編集 = hitoto(@tonariniwa

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