米津玄師はよく食材を扱う。彼は料理をするのだろうか。
NHK「みんなの歌」に米津玄師の楽曲が提供されることになった。その名も「パプリカ」。
いまや、彼の代表する曲となった「Lemon」や、そのカップリング「クランベリーとパンケーキ」、そして今回提供の「パプリカ」。すべて食べ物である。
これらは、タイトルの時点で既に食べ物だが、思い返すと、彼の楽曲には、料理や食材が(地味に)よく登場する。歌詞という枠で、彼が食材をどう調理をしてるか、どれくらいあるのか改めてみようと思います。(対象:米津玄師名義全曲)
歌詞にたびたび出てくる食材(たべもの・料理)
クランベリーのジャム
ジャムレシピ
ヒッピヒッピシェイク ダンディダンディドンで クランベリーのジャムでも作ろうね
:「クランベリーとパンケーキ」より
1.2ジャブで、まずはジャム。クランベリーのジャム。
パンケーキ
ヒッピヒッピシェイク ダンディダンディドンで クランベリーのジャムでも作ろうね
パンケーキと一緒に食べようね
:「クランベリーとパンケーキ」より
インスタ映える米津玄師。
パンケーキの言葉が出てくるのがとても新鮮だった。
パンケーキは、もやはJKと大学生の主食みたいなもので、好きな層がはっきりしてる。
写真を撮って、すぐ捨てる人いるらしいけど、ゴミ箱にポイ捨てはもったいない。やめようね。ヒッピヒッピシェイクダンディダンディドンでやめようね。インスタ映えの闇は深い。
たくさんの「くだもの」
りんご レモン ぶどう メロン
いちご バナナ みかん キウイ
:「こころにくだもの」より
初めて聴いたとき、「みんなの歌」があたまをよぎった。「パプリカ」が「みんなの歌」に向けてプロデュースされると知ったとき、真っ先に頭に浮かんだのが、この曲。「こころにくだもの」はいつみんなの歌になるんですか?
サビではひたすらに果物を歌い上げる。この部分だけ抜き出すと、わけのわからなさが天元突破してる。冒頭の部分をしらないと、ただ食べ物を欲してるだけの少年に思える。それではただの食いしん坊。
米津作品の中で、曲調も歌詞も突き抜けて優しい曲。「アンビリーバーズ」のカップリングだからか、あまり知られてないのが少し惜しい。
林檎(の木)
太陽のような林檎が落ちた 心ばっか 探して歌ってる
ピンホールの あやふやな写真ばっか 並んで凍えてる
:「乾涸びたバスひとつ」より
「恋と病熱」ともリンクする曲。初期の米津玄師屈指の世界観を持つ曲。
りんごの花咲く春の日まで 心の目印曇らせないように
吹雪に曝され歩いていけ 虚しさ抱え混沌の最中まで
:「翡翠の狼」より
砂漠に林檎の木を植えよう
:「砂の惑星」より
アダムとイブの匂わせるフレーズ。
カボチャ(の馬車)
カボチャの馬車もカラスの靴の似合わなくて ただひたすら何事もない日々のあり合わせ
:「シンデレラグレイ」より
童話「シンデレラ」をモチーフにしたストーリー。NTT西日本スペシャルムービーにも起用。
※現在非公開になってしまったので見れません
カボチャの馬車なので、はっきりいって食材でもなんでもないけど一応リスト。
現実に存在すれば、一度は乗ってみたい。「かぼちゃ型の人力車」とかないのかなと思って調べたら、あった。
食材の味わいはなくとも、これでお姫様気分を味わえる。(ただしもうやってない)
ポテト・パスタ
少し薄味のポテトの中
塩っけ多すぎたパスタの中
:「メランコリーキッチン」より
「パスタ」と聞くと、「おいしいパスタ作ったおまえ」と濁声が脳内で再生されるのそろそろどうにかしたい。
チェリーボンボン・タルトタタン
部屋に残しってた甘いチェリーボンボン
無理して焼き上げたタルトタタン
「米津玄師・食べ物」のイメージで早い段階で思いだす曲。
食べ物が出てくる歌詞だけを見ると、ただ料理してるように見えるけど、この曲、解釈がかなり難しい。
どんな心境で、その箸を進めてるのか。一人で部屋にいる主人公が次の日どうするのか気になる。
チューインガム
チューインガム 大昔に賞味の期限は過ぎたけど
ブーイングコール 嫌になるほど御得な商品さ
:「駄菓子屋商売」より
ちゅー⤴ちゅー⤵チューいんがーむ
キャンディ
顔も知らんようなそん所そこらの
もう腐って死ぬ古キャンディ:「駄菓子屋商売」より
チョコレート
病んだ心と宙を舞うばかり
もう腐って死ぬチョコレート:「駄菓子屋商売」より
駄菓子屋商売の、寂れた街の潰れたスーパーマーケット感が良い。dioramaの曲は本当にいい意味で暗い。この曲もとにかく陰鬱。
キャンディ
「このキャンディが溶けてなくなるまでそばにいて」と言った
:fogbound(+池田エライザ)より
2つ目のキャンディ。
コーヒー
コーヒーを零して染みた跡が 嫌に目に付く
:fogbound(+池田エライザ)より
「池田エライザ、イナイゾ?」な曲。コーラスにすんなり溶け込みすぎてコラボであることを一瞬忘れそうになる。
コラボ故に、歌詞の物語を、米津玄師と池田エライザでストーリーを想像してしまう。あの2人なら、これまた絵になる。
モデルであり、歌も上手い。味もある。天は彼女になん物与える気なのか。
チェリーボンボン
あんたが部屋に残してったチェリーボンボンのいい香り
こんな夜跨いで 朝塞いで
:「TOXIC BOY 」より
さくらんぼ好きな人以外にはウケが悪いチェリーボンボン。けど、ほんといい匂いするんですよ。匂いは。メランコリーキッチンに続いて二回目の登場のチェリーボンボン。
ドーナツ
ドーナツの穴みたいににさ 穴を穴だけ切り取れないように
あなたが本当にあること 決して証明できはしないんだな:「ドーナツホール」より
哲学(科学)の有名な議題に「ドーナツの穴問題」があって、それをモチーフにした曲「ドーナツホール」。
この話とても面白いので、何かしら言及したいですが、食の話から逸れるので、気になる方はこちらをどうぞ。
アゴラ言語プラットフォーム様より
ジャスミンティー
差し出したジャスミンのお茶でさえ 泣き出しそうな顔をして
戸惑いながら口を付けた あなたを知ってるよ
:「Blue Jasmine」より
鼻に抜ける感じが独特のジャスミンティー。
ローソンで「翡翠レモンジャスミンティー」が登場したとき、界隈が湧いてた。
翡翠(翡翠の狼)+レモン(Lemon)+ジャスミンティー(Blue Jasmin)で、米津ファンが食いついた。
狙ったのかと疑いたくなるこの「翡翠レモン」は元々台湾発祥。翡翠レモンティーはさっぱりとして人気だそう。
そこに「ジャスミンティー」を付け加えたのは、意図はどうあれ、成功となった。ただ元々数量限定だったため、飲みたくても飲めない「翡翠レモンジャンミンティー難民」が相次いだ。
レーズンパイ
ムーンライト 爪が伸び放題 使う予定もない
差し出されたレーズンパイ
:「Moonlight」より
アルバム「BOOTLEG」の異色の曲。この曲を聴くと、いつもMOTHER2の「ムーンサイド」を思い出す。
野菜のかもす”日常感”

野菜離れだのなんだのいいますが、食事をすれば必ずといっていいほど登場します。食わず嫌いさえしなければ。
米津玄師の歌詞は文学的で、やや難しいところも多いのですが、ここを上手く中和してる要素のひとつが「野菜」もとい、食。
食、生きる上で必須のもので、それらの言葉は馴染み深く、とても頭に残りやすい。
ただ、過去にラジオで「あまり食に頓着がないんですよね」と発言していたので、狙っているのかどうかは定かではない。お酒好きと何度も言ってるので、食事や会話には頓着あるはず。
わかりやすさ(ポップさ)を支える

これもまた自分の持論ですが、馴染みのあるものが出てくることで一気に理解度が増します。
今回の場合、「食べ物」。衣食住とあるように、食は生きる上で必須。食べ物は共通言語なわけです。イメージがしやすい。
この共通言語がないものは、理解が得難い。わかりにくいものは、とことんわかりにくい。
国の法律とか、役所の作ったホームページは、とにかくわかりにくく出来てる。必要な情報なのだから、もっとポップにしてくれたらいいのにと思う。あのわかりにくさは、もはやワザとですよ。搾取のための陰謀ですよ(?)
自分が通ってた小学校や、中学のページでもいいのでを検索してみてください。ほんとみにくいはず。
米津玄師の場合、歌詞に難解さがあるのに人気な理由は、曲、メロディ、歌詞に見える絶妙な日常感。そのバランス。
文学的、詩的、抽象的、哲学的な言葉だけじゃないから、老若男女に広く支持されるわけです。それこそ初期(ハチ名義含め)のほとんどは、物好きが好む音楽でした。
初期やボカロ時代は癖がすごい
今回は食材や食べ物にスポットを当てましたが、米津玄師に限らず、世の中の「わかりやすい・好き」と思えるものには、ほぼ必ず「あなたの記憶と記録」があります。
生きてれば勝手に見つかるもけれど、たまには自分から探してみても楽しい。
食材まとめ
・クランベリーのジャム
・パンケーキ(クランベリーとパンケーキ)
・ぶどう メロン いちご バナナ みかん キウイ(こころにくだもの)
・レモン(こころにくだもの、Lemon)
・ポテト、パスタ、タルトタタン(メランコリーキッチン)
・チェリーボンボン(メランコリーキッチン、TOXIC BOY)
・チューインガム、チョコレート(駄菓子屋商売)
・キャンディ(駄菓子屋商売、Moonlight)
・コーヒー(Moonlight)
・レーズンパイ(Moonlight)
・ドーナツ(ドーナツホール)
・ジャスミンのお茶(Blue jasmine)
一番多かったのは食べ物は「りんご」。次点に「キャンディ」「チェリーボンボン」。
番外編
アルコール
どうしようもないのね アルコールにでも漬けといたらどう?
:「caribou」より。
食材ではないけど、衛生を鑑みれば、必須の物質。
食材触る前にアルコール消毒をすれば、食中毒のリスクが数%減ります。料理するときはお気をつけて。
錠剤

大変だ 心溶け出して辛い
ねぇ、あんたの持ってる錠剤頂戴
:TOXIC BOYより
錠剤頂戴の響きが上々。気分上々、へいDJ。
この曲、歌詞が中々危険。タイトルからして不穏な空気がプンプンしてる。
つまりそれを飲み込めたならオーライオーライ
暗い悲しい癒えない間違い 捨ててしまえるさ遠く向こうへ
頭空っぽもう気づかない
ボルタレン
ムーンライト 幽かに明るい部屋 なだらかなノイズ
効き目薄いボルタレン
:「Moonlight」より
これも同じく「錠剤」で、ボルタレンは解熱・鎮痛剤。
サラダ(空耳)
さらば!思い出せないような
茫然自失の毎晩を 君の全てで爆破して
:「MAD HEAD LOVE」より
完全に空耳(聞き間違い)なんですが、サビの「さらば」がいつも「サラダ!」に聴こえる。自分の脳に野菜が足りてないのかもしれない。警鐘をありがとうございます。
むすびに
それなりの数登場してた食べ物たち。想定よりは、正直少なかった。もっと多いかと思いました。
米津玄師は言葉の使い方が上手ければ、食材の扱いがうまい。
彼の手料理を食べたわけではないけど、音楽を聴いて歌詞を聴き、そこで扱われる食材達が踊って、音から栄養を貰える。食べれるものなら手料理を振る舞ってもらいたい。(余談:同じボカロクリエイターの「ゆっけ」(yukkedoluce)さんは次のライブでご飯を振る舞うらしい。)

栄養取らないとほんとに体壊すので、野菜食べましょう。よく栄養不足で身体壊しかけるので自戒も込めて。