むしろなってほしい。
わかい層から小さい頃にフラッシュを見た世代に人気のバンドではあるが、BUMP OF CHICKEN(以下BUMP)の楽曲は老若男女が聴けます。年なんて実は関係ない。
子どものときに聴いても、大人なってから聴いても、中二病の時に聴いても、いつでもなにか感じさせる力がある。
そんなリスナーの範囲が広いBUMP。彼らの楽曲のひとつ『魔法の料理〜君から君へ〜』が2010年4月〜5月の「みんなのうた」に採用された。
これが決まった当時、「他にも”みんなのうた”に合う曲たくさんあるなぁ」と思った。そして今も思うわけです。
ボーカルの藤原基央(藤くん)も「童謡を作りたい」と音楽初期から発言していて、それを感じさせる曲がBUMPには他にもたくさん。それらを紹介します。
もくじ
個人的にすでに「みんなのうた」なうた
かさぶたぶたぶ
僕はかさぶた 君の膝小僧 擦りむいたトコとこから 生まれた
今日の放課後 ケンカした君の 泣き声に呼ばれた
「かさぶた」を擬人化したお話。THEみんなのうた。「キズの治り」と「友情の修復」がテーマ。
このかさぶたの声、まるで会話してるように見えるけど、実はかさぶたの独り言となってる。一切の対話のない、一方的な会話。
この声が、ケガをした子に届いているのかどうかさえ怪しい。
そこがまたミソで、届いてるかどうかわからないのに懸命に話し続けるかさぶたの健気な姿が、この歌詞の「よい余白」となってる。
「ほんとは歌詞の外ではちゃんと会話してるんじゃないの?」
「届いてるに違いないよ」
「いや、ひとりで話してるんだよ」
そんな風に、物語をリスナーが想像で補える余白がいい味を出してる。思慮に溢れるのはいいものの証。
ねぇ気付いてる? 少しずつ僕が小さくなってる事
かさぶたが「僕」と言ってるだけで、ケガをした人に性別も年齢も一切の指定がない。そこも良い。
はじめまして 仲良くやろうぜ かゆいからって剥がすなよ
短い間だと思うけど ここはまかせとけ
また会える日が待ち遠しいけれど 本当は
二度と会わずに済むのが一番 怪我には気をつけてほしいな
でもたまには 転んでもほしいな
ケガをしたとき、怪我がそんな風に思ってくれてると考えると、ケガするのも悪くないと思える。
歌詞にもあるように怪我なんてしないのが一番だけど、どれだけ気を払ってもするときはする。そんなときにふと思い出す曲。
arrows
大長編の探検ごっこ 落書き地図の上
迷子は迷子と出会った不燃物置き場の前
嫌いな思い出ばっかり詰めた 荷物を抱えて
ずっと動けない自分ごと埋めてと笑った迷子は迷子と出会ってリュックサックのとりかえっこ
行きたい場所は全部廻って いい加減に飽きたら
あんなに近い ずっと遠い あの雲にのぼろう
迷子達がであって、記憶を共有してゆく話。
どうでもいいなぁと思える関係性が、いつの間にか大事になってたり、大事だなと思えるものが実はどうでもよいものだったり。
何が大事で、誰が大事なのかをふと考えさせてくれる優しい歌。
もう一度やって驚いた リュックサックのとりかえっこ
素敵な思い出ばっかり詰めた 荷物になってた大丈夫 見つけたものは本物だよ 出会ったことは本当だよ
捨てられないから持ってくよ 迷子だったときも
迷子と聴くと、ファンならおそらく『ロストマン』が浮かぶ。(迷子は頻出単語でもありますが) かの名曲。
『ロストマン』と『arrows』は共通点が多く、これらは世界観はよく繋がっているように思えます。
みんなのうたに推す曲にしては、若干わかりにくさやネガティブワードが目立つけど、この物語は広く聞かれてほしい。
分別奮闘記
君の夢がゴミと化して はや幾星霜
捨ててこそゴミでしょうと勇ましく
「夢(目標)」を捨てようとする歌。
見るからにしぶとそうだ 不燃物だろう
指定された火曜日 ほっと一息だけど持って行かれてないぜ 紙が貼ってあるぜ
なになに「燃えるゴミは月曜日」
しかし、捨てようとして捨てることを許されず。
明らかにでかいから 粗大ゴミだろう
これを捨てるためなら金も払える
だけど持って行かれてないぜ 紙が貼ってあるぜ
「普通のゴミはゴミ袋へ」
日を変え、捨て方を変えるも、捨てられない。
「だけど持って行かれてないぜ」のフレーズは初めて聴いたとき思わず笑った。
出しても出してもダメ出しされるゴミ出し。「なんだこのシュールな絵面は」と笑った。
捨てないのなら違いますよ
持ち主がいるのなら夢ですよあの日からずっと夢のままですよ
最終的に、ゴミだと判断してたものは「夢」に戻る。
挫折とか、なにかを諦めてしまいそうなときに聴くと、ユーモアあるこの歌に元気をもらえる。
ダンデライオン
ライオンがダンデライオン(タンポポ)と出会う話。
お前は 俺が 怖くないのか? 逃げないでいてくれるのか?
吹き抜ける風と共に 一度だけ頷いた
「サバンナの嫌われ者」が「美しく咲くタンポポ」にどことなく救われる。
かさぶたぶたぶと同様に、ライオンの一方的な話の展開。
ライオンは力尽きるけど、悠々と咲くタンポポをみて、その最後は幸せに終える。どことなくワンピースのエースの最後にも似てる。
孤独で切ない。けどその生涯は寂しくない。ひとりでも少数でも心許せる存在があるなら、素晴らしいこと。
ハンマーソングと痛みの塔
お集まりの皆様方 これは私の痛みです
あなた方の慰めなど 届かぬほどの高さに居ます
自分の「闇」を積み上げて、世間から隔たってしまう話。
自分で壁つくって、どうしようもなくなって出られない。それのタワーバージョン。シンプルに降りられないのだ。なんせ階段がない。じゃぁどうやって積み上げて登ったんだと言いたくなるけど、そこはご愛嬌。
きっと私は特別なんだ 誰もが見上げるくらいに
孤独の神に選ばれたから こんな景色の中に来た
強がり。うまくいかないことを正当化してひたすら強がり。
聴こえるのは風の音だけ 戦個目の箱積み上げた
下をみたら目眩がした 掛けた椅子飛ばされた
そして 本当に寂しくなった 誰にも見えてないようだ
強がってはいるけど限界を迎える。いつまでも孤独ってのは、やっぱり寂しいもんだ。
下から順にダルマ落とし 誰かが歌うハンマーソング
皆アンタと話したいんだ 同じ高さまで降りてきて
わざわざ下ろしくれる優しい下の人たち。優しい世界。
誰かが手を差し伸べてくれたときは、つっぱらずに掴んでみてもいいんじゃないでしょうか。平行なとこまで降りてきて、対等に話すればいい。
涙のふるさと
探さなきゃね 君の涙のふるさと
頬を伝って落ちた雫が どこから来たのかを
ロッテエアーズのCMソング。地味に初CMタイアップ
CMにも使われてたのでサビを聴いたことがある人が多い。
「会いに来たよ 会いに来たよ」のサビ部分だけ聴くと、なんの変哲もないラブソングに思われがちだけど、実はこれ、主語が「涙」なのだ。藤くんお得意の擬人化。
「会いに来たよ 会いに来たよ
君の心の内側から 外側の世界まで 僕を知ってほしくて来たんだよ」
サビだけが「涙の主張」になっていて、他の部分は藤原基央(もとい主人公)がいる。
この曲は対話ではなく、「歌(藤くん)」と「擬人化した涙」のふたりの主張を聴く歌。
冒頭でも言った通り、一見ラブソングに聴こえるように作られてるのが、上手い。歌いやすいし馴染みやすいのに、ちょっとよく聴けば小さい驚きがある歌。
pinkie
未来の私が笑ってなくても あなたとの今を覚えてて欲しい
ピンキー。英語で意味は「小指」。小指と言えば、指切りげんまん、つまり「約束」のうた。
また「桜がテーマ」と藤くんは語っていて、「ピンキー」→「ピンク」→「桜」も連想させる。
カップリングで埋もれるのがあまりにも惜しい。隠れ名曲のひとつ。
Aメロの「メロディ(抑揚)の少ない囁くようなフレーズ」は藤くんにしては、かなり珍しい歌い方だった。(リリース当時は)
囁く歌い方自体は珍しくないけど、話すような淡々とした言葉の連続は、滅多にない。
過去からの声は何も知らないから 勝手な事だかり それは解ってる
未来の私が笑ってなくても あなたとの今を覚えてて欲しい
昔の後悔(自分の声や他人の声)はいつも無責任で、無茶ばっかり言う。
どうせ文句言われるくらいなら、今を精一杯に楽しく生きることが一番良い過去を産むのです。
変われなくて いつも戸惑うけど
誰か一人が笑ってくれたら 僕はこれがいい
あなたのためとは 言えないけど
あなた一人が聴いてくれたら もうそれでいい
小さい子がもし「みんなのうた」でこれを聴いて口ずさんでいたら振り向いてしまうと思う。まさしくな状態がそこに存在してるんだなと染み染みしてしまうだろうに。
真っ赤な空を見ただろうか
溜め息の訳を聞いてみても 自分のじゃないから解らない
だからせめて知りたがる 解らないくせに聞きたがる
他人がいるから、嫌いにもなれば好きになる。そんな風な歌。
あいつの痛みはあいつのもの 分けてもらう手段が解らない
だけど力になりたがるこいつの痛みもこいつのもの
良いジャイアン。
言葉ばかり必死になって やっと幾つか覚えたのに
ただ一度の微笑みがあんなに上手に喋るとは
たった一つの笑顔が、幾万の言葉よりよく喋る。
一人で見た真っ赤な空 君もどこかで見ただろうか
僕の好きな微笑みを 重ねて浮かべた夕焼け空
ひとりしかいなかったら思うこともなんにもない。
曲調は明るく、歌詞も前向き。NHKさん、どうですか。「真っ赤な空を見ただろうか」どうだろうか?
むすびに
今回あげたこれらの曲は、個人的に「既にみんなのうた」です。何言ってんだこいつ、と思うでしょうか。自分でも何言ってるんだろうと思います。
『K』や『ラフ・メイカー』『銀河鉄道』などなども入れようか迷ったけど、テーマが重すぎたり、シャウトが強すぎると「みんなのうた」っぽくはないかな?と思い、そこは外しました。
藤君のつくる優しい楽曲にふれるきっかけになれば幸いです。
BUMPの曲はフレーズ単体で聴いても、その真価が発揮されないことが多いので是非一曲通して、物語を楽しんでほしいです。
5thアルバムである『orbital period』の曲が少し多くなったのですが、アルバムに絵本(ブックレット)が付属してるからかもしれません。
音楽だけでも十分ですが、あの絵本があるとよりアルバムを楽しめます。手にとってペラペラするのほんと楽しいですよ。藤くんの絵はほんとほんわかする。ホンワカパッパ。
数曲こうして上げましたが、正直まだまだ優しい曲、広く聞かれてほしい曲は眠ってます。
『車輪の唄』『embrace』『歩く幽霊』『ガラスのブルース』『東京賛歌』『ダイヤモンド』『プレゼント』『white note』『夢の飼い主』『銀河鉄道』『ギルド』『ウェザーリポート』<などなど、挙げればほんとにキリがない。 あなたのお気に入りを探してください。または是非教えてください。
ではまた。